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福島地方裁判所 昭和27年(行)25号 判決

原告 武藤良次

被告 木幡村長

一、主  文

原告の訴のうち、被告に対し木幡村議会が昭和二七年三月二八日木幡村大字内木幡字田中一四番田一反歩についてした農地かい廃の議決の執行禁止、同所一三番田三反二畝二〇歩のうち一反歩をかい廃するに必要な措置を命ずる旨を求める部分を却下する。

原告その余の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告は、「一、被告は、木幡村に対し金一六五、九三七円を支払え。二、被告は、木幡村議会が昭和二七年三月二八日木幡村大字内木幡字田中一四番田一反歩についてした農地かい廃の議決を執行してはならない。三、被告は、木幡村大字内木幡字田中一三番田三反二畝二〇歩のうち一反歩をかい廃するに必要な措置をせよ。四、訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、その請求の原因として次のとおり述べた。

木幡村長である被告は、昭和二四会計年度村公金、昭和二五会計年度村公金、昭和二七会計年度村公金のうち、合計金一六五、九三七円を以下に詳述するような違法な経費の支弁にあてた。すなわち、

(一)  さきに、木幡村議会は同議会の議員である丹治亀吉を除名する旨の議決をしたところ、丹治はこれを不服として村議会を被告とし福島地方裁判所に右議員除名処分取消の訴を提起し、同訴訟事件は昭和二四年(行)第一一八号村議会議員除名決議取消請求事件として係属した。ところが、被告は、村議会が右訴訟に応訴するために必要な経費を金四〇、〇〇〇円と見つもり、これを木幡村昭和二四会計年度歳出追加予算及び昭和二五会計年度歳出追加予算に訴訟費として計上して村議会に提出し、同議会の議決を得、その執行として木幡村昭和二四会計年度公金のうち金三〇、〇〇〇円を、昭和二五会計年度公金のうち金五、九三七円を支出してそれぞれ右経費の支弁にあてたのである。しかし、普通地方公共団体が支弁しうる経費は、地方自治法第二二八条の規定によりその公共事務、その区域内における行政事務で国の事務に属しないものを行うために必要な経費、法令により当該普通地方公共団体の負担に属するものと定められたものに限られ、右事務は同法第二条が例示しているものに限定されるのであるから普通地方公共団体は地方自治法第二条が例示する事務を行うため必要な経費及び法令によりその負担に属するものと定められた経費に限つて支弁できるものといわなければならないが、同法第二条は村議会が当事者となつて訴訟を行うことを当該自治体の事務とはしていないので、右訴訟の費用は普通地方公共団体の負担に属しない。従つて、被告の前述した支出行為は支弁することのできないものを支弁した違法のものである。

(二)  被告は木幡村が村立中学校の校庭を拡張するためその用地として武藤登所有の木幡村大字内木幡字田中一三番田三反二畝二〇歩のうち一反歩を同人から買い受けたが、右買受のため菅野靖所有の同村大字内木幡字下小寺山八四番田三畝二五歩、同所八五番田一畝六歩、同所八七番田五畝一五歩を代金九〇、〇〇〇円で買い受け、昭和二七会計年度村公金のうち同額の金員を支出して菅野にその支払をし、かくて取得した右農地三筆の所有権を武藤に移転したほか、武藤との右売買代金として金九〇、〇〇〇円を支出して同人に支払つたのである。また、その当時菅野伊宗治が靖から右農地三筆を賃借して小作していたので、離作補償金として昭和二十七会計年度村公金のうち金四〇、〇〇〇円を支出して同人に支払つた。ところで、村議会は昭和二七年三月二八日開会された会議において右村立中学校の校庭の拡張に関し審議した結果、その用地として武藤登所有の前述の農地及び同人所有の木幡村大字内木幡字田中二四七番山林のうち一畝歩、武藤利三郎所有の同所二〇三番の一山林のうち三畝歩を購入する旨を議決したのであり、また、右会議で木幡村昭和二七会計年度歳入、歳出予算として議決した歳出予算によれば右村立中学校の校庭の拡張のため支弁すべき経費の総額は金四八〇、四五〇円、そのうち土地購入のため支弁すべきものは田につき九〇、〇〇〇円、山林につき一二、〇〇〇円合計金一〇二、〇〇〇円、また右校庭拡張にあたつての損失補償のため支弁すべき経費は金一一八、〇〇〇円、そのうち購入農地の小作人に対し離作補償金として支弁すべきものは金一一、八〇〇円と定められているのである。されば、菅野靖所有の農地三筆の購入は村議会の議決を経ていない点で違法のものであるから、同農地の買受代金にあてるため被告のした金九〇、〇〇〇円の支出行為は違法であり、また、前述の経緯によつて明らかなとおり武藤から木幡村大字内木幡字田中一三番田三反二畝二〇歩のうち一反歩を買い受けるため被告は買受代金として金一八〇、〇〇〇円を同人に支払つたわけであるから、被告のその支出行為は右歳出予算で定められた金九〇、〇〇〇円の予算額を超過する限度で違法のものである。菅野伊宗治に対して離作補償金として金四〇、〇〇〇円を支払うためにした被告の同額の支出行為はもともと同人が小作していた菅野靖所有の前示農地三筆の購入について村議会の議決を得ていないので同人に離作を求めるべきいわれはないから離作を求めてその補償をすべき筋合のものではないし、ことに右歳出予算で離作補償金として支弁すべき経費は金一一、八〇〇円とする旨定められているのであるから被告の右金四〇、〇〇〇円の支出行為はまつたく村議会の議決を無視した違法のものである。

次に、被告は、木幡村大字内木幡字田中一四番田のうち一反歩につき村立中学校の校庭用地にあてるため農地のかい廃を行うべきであるとの議案を村議会の右会議に提出し、同日村議会はその旨議決した。他方、被告は前述の同所一三番田三反二畝二〇歩のうち一反歩につきそのかい廃の許可を福島県知事に申請し、同知事からその旨の許可を得たのである。そうすると、村議会が右一四番の田についてした農地かい廃の議決は知事の右許可処分をした意思にもとるものであるから結果的にこれをみれば右議決は知事をあざむいて右一四番の田をかい廃しようとするもので、既にこの点で違法のものであるが、被告は前段に詳述したように右一三番の田を買い求めるためその譲渡対価として金一八〇、〇〇〇円、ほかに離作補償金として金四〇、〇〇〇円を投じたほどであるから村立中学校の校庭拡張のためその用地として農地かい廃を行うには右一三番の田につきこれをすることこそ当然であれ、右一四番の田についてこれをする理由はまつたくなく、右議決は不当のものといわなければならない。

かようなわけであるから、村は被告の以上の合計金一六五、九三七円の違法な支出行為によりこれと同額の損害を被つたので被告は村に対しその損害を補てんすべき義務があり、村議会が木幡村大字内木幡字田中一四番田のうち一反歩についてした農地かい廃の議決は違法若しくは少くも不当のもので、将来執行されるべきものではないから被告は村に対し右議決を執行しない不作為義務をおい、また、前述の経緯に基き被告は村に対し同所一三番田三反二畝二〇歩のうち一反歩をかい廃するために必要な措置をすべき義務をおうものである。木幡村住民である原告は、同村が監査委員を置かない村であるから昭和二七年八月一四日直接被告に対し前述の諸事実を理由として地方自治法第二四三条の二の規定に基き右損害の補てん、右議決の執行禁止等を請求したが、被告はかような事実はすべて存在しないものと認めて何等の措置をも講じない。そこで、原告は被告に対し村に対する金一六五、九三七円の支払、右一四番の田について村議会がした農地かい廃の議決の執行禁止、右一三番の田をかい廃するため必要な措置をすることを求めるため本訴請求に及んだ。かように述べた。(証拠省略)

被告は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、原告の主張事実に対して次のとおり答えた。

原告の主張事実中、原告は本幡村住民であり、被告は木幡村長であること、原告が地方自治法第二四三条の二の規定に基き、被告に対し、その主張のような理由により被告が金一六五、九三七円の損害を村に被らしめたものとしてその損害の補てん村議会が昭和二七年三月二八日した木幡村大字内木幡字田中一四番田のうち一反歩をかい廃する旨の議決の執行禁止、同所一三番田一反歩につき農地かい廃をすべき旨を請求したが、被告はこれに関して何等の措置をも講じていないこと、木幡村議会は同議会議員丹治亀吉を除名するとの議決をし、丹治は村議会を被告としてその除名処分取消の訴を福島地方裁判所に提起し、同訴訟事件は同裁判所昭和二四年(行)第一一八号村議会議員除名決議取消請求事件として係属したこと、被告は右訴訟の完結に至るまで村議会が訴訟を遂行するに要した総経費のうち金三五、九三七円を支弁するため昭和二四会計年度、昭和二五会計年度年村公金のうち同額の金員を支出したこと、被告の支出した右経費は原告主張のような各歳出予算に訴訟費として計上され村議会の議決により定められた経費額の範囲内のものであること、村議会は村立中学校の校庭を拡張し、その用地にあてるため武藤登所有の木幡村大字内木幡字田中一三番田のうち一反歩を購入する旨を議決し、被告は同農地を同人から買い受けたことは認めるが、その余の点は被告が右農地のかい廃の許可を福島県知事に申請し、同知事はこれを許可したとの点を除き、すべて争う。まず、右訴訟に要した経費を支弁するために被告のした右金員の支出行為には違法の点は少しもない。訴訟を遂行することは地方自治法第二条が普通地方公共団体の事務として列挙するものゝうちに含まれていないけれども、同法には、普通地方公共団体がその機関である村議会のする訴訟に必要な経費を支弁することを禁止する規定はないのであつて、かような経費は当然に当該普通地方公共団体の負担しうるものである。被告の支出した右金員は、村議会が福島地方裁判所において右訴訟に応訴するために要した費用とその控訴審である仙台高等裁判所において控訴人として右訴訟を続行するために要した費用とを含むものであるが、木幡村昭和二四会計年度、昭和二五会計年度各歳出予算に計上されて村議会の議決により定められた経費額の範囲内のものであり、しかも右金額は福島地方裁判所で確定決定を受けた訴訟費用額なのである。更に、右控訴費用については、村議会の議員等がこれを村に寄附し、村はその寄附金を収納しているのである。被告が右一三番田のうち一反歩を取得するに際して予算を超過して村公金を支出したことはない。これ等の点に関する原告の主張事実は架空のものである。かように述べた。(証拠省略)

三、理  由

原告が木幡村住民であつて、昭和二七年八月一四日被告に対し、(一)被告が昭和二四会計年度、昭和二五会計年度において原告丹治亀吉、被告木幡村議会間の福島地方裁判所昭和二四年(行)第一一八号村議会議員除名決議取消請求事件に要した訴訟費用にあてるため村公金のうち合計金三五、九三七円の支出を命じ、(二)昭和二七会計年度において武藤登所有の木幡村大字内木幡字田中一三番三反二畝二〇歩のうち一反歩を購入するため、議会の議決を経ないで菅野靖所有の同所字下小寺山八四番、八五番、八七番所在の田を金九〇、〇〇〇円で買入れて同額の支出を命じ、(三)右三筆の農地を小作していた菅野伊宗治に離作補償金を支払うため金四〇、〇〇〇円の支出を命じ、それぞれ現実に支払がなされたが、以上の各金員の支出命令はいずれも違法のものであるから村はこれと同額の損害を被つたわけであり、また、(四)被告は右一三番田一反歩を村立中学校敷地にあてるため農地かい廃の措置をとるべきであるのにその措置をとらず、かえつて村議会に対し同所字田中一四番田一反歩を右用途にあてるためかい廃すべき旨を提議してその旨の議決を得、その執行をしようとしていると主張して、右損害金合計一六五、九三七円の回復並びに右議決の執行の禁止、右字田中一三番田一反歩につき農地かい廃を行うために必要な措置をとることを請求したが、被告はこれに対し何等の措置をも講じないでいることは当事者間に争がなく、木幡村が監査委員を置かない村であることは当事者弁論の全趣旨によりこれを認めることができる。

そこで、右(一)ないし(四)の点につき原告の違法とする理由の当否を順次判断する。

(一)について。木幡村議会が同議会の議員丹治亀吉を除名する旨を議決し、丹治がこれを不服として村議会を被告として福島地方裁判所に右除名処分の取消の訴を起し、同訴訟事件は同庁昭和二四年(行)第一一八号村議会議員除名決議取消請求事件として係属したこと、被告が右訴訟の遂行に要する経費にあてるため昭和二四会計年度、昭和二五会計年度において合計金三五、九三七円の支出を命じ、同額の金員が村公金から支払われたこと、右金員の支出は木幡村昭和二四会計年度歳出追加予算、昭和二五会計年度歳出追加予算に訴訟費として計上され、村議会の議決により定められた経費額の範囲内のものであることは当事者間に争がない。村議会がその議員を除名する旨の議決をした場合、議会は、右議員から提起する除名処分取消の訴訟において処分行政庁として被告とされるのであり、またその訴訟に応訴する義務があるのであるから右訴訟を遂行することは議会固有の事務といえるのであり、他方当時施行の地方財政法(昭和二三年法律第一〇九号)第九条第一項、第二項第一号の規定によれば、普通地方公共団体は議会の事務処理に要する経費はその全額を負担するものであるから村議会が右訴訟を遂行する上に要する経費はすべて村において負担すべきである。従つて被告が前述の訴訟の経費にあてるため金三五、九三七円を支出した行為を違法とする原告の主張はその理由がない。

(二)について。木幡村議会が村立中学校の校庭を拡張するため武藤登所有の木幡村大字内木幡字田中一三番田のうち一反歩を購入する旨を議決し、被告がその執行として武藤から右農地を代金九〇、〇〇〇円で買い受けたことは当事者間に争がなく、成立に争のない甲第一号証中木幡村昭和二七会計年度歳出予算の記載証人菅野新之助、武藤登、藍原久明、三浦新助、阿部庄之丞の各証言に当事者弁論の全趣旨を総合すれば、次の事実を認定することができる。村議会が昭和二七年三月二八日右議決をした後三浦新助、藍原久明等が被告の命を受けて武藤に売買の交渉をしたところ同人は右農地は生活上必要なものであるから、その代替地として菅野靖所有の字下小寺山所在の田を売つてもらえるなら、右一反歩を村にやつてもよいといつたので、藍原、三浦等は菅野に以上の経緯を伝えて同人所有の田一反歩の売渡を求めたところ、同人はこれに応じたので、ついで、武藤登と菅野靖との間で、靖が木幡村大字内木幡字下小寺山八四番田三畝二五歩、同所八五番田一畝六歩、同所八七番田五畝一五歩を代金九〇、〇〇〇円で登に売却する旨の約束が成立し、これとともに村と登との間で前述の農地の売買契約が成立した。

ところで、菅野靖所有の右農地三筆は菅野伊宗治がこれを小作していたので更に同人に対して離作を求める必要があるので、右両名と靖、伊宗治等との間で交渉した結果伊宗治は右農地三筆の離作を承諾しその補償は村がすることとの話合ができた。そこで、被告は前示議会の議決により昭和二七会計年度木幡村歳出予算中中学校の新営改築のため土地購入に要する経費を一〇二、〇〇〇円うち、田の購入にあてるべきもの金九〇、〇〇〇円、離作補償に要する経費を一一八、〇〇〇円と定められたこと(離作補償金が一一八、〇〇〇円と定められたことは後に認定するとおりである。)に基き武藤からの農地買受代金を支弁するため金九〇、〇〇〇円、菅野伊宗治の離作を補償するため金四〇、〇〇〇円を村公金から支出し、右各金員を武藤に交付し、武藤は更にこれを靖に、靖はそのうち金四〇、〇〇〇円を伊宗治に支払つた。以上の事実が認められる。証人丹治顕正、三浦浅尾の各証言のうち「被告は字下小寺山八四番、八五番、八七番所在田の買受代金を支払うため村公金から金九〇、〇〇〇円を支出した。」との趣旨に帰着する部分は、右各証言によつて村内のうわさに過ぎないことが明らかであり、且つ先きにあげた各証言と対比して到底採用することができないし、証人関四郎右衛門の証言のうち、離作補償金は一一、八〇〇円と定められた旨の供述は後記認定に照らして採用しない。その他に右認定を動かすに足りる証拠はない。右認定事実によつて見れば、被告が菅野靖から同人所有の字下小寺山八四番、八五番、八七番所在の農地三筆を買い受けたものでなく、靖と武藤登との間の右農地の売買につき仲介をしたに過ぎないものと認められるのであるし、また、被告が武藤から前述の農地を買い受けるにつきその売買契約で定められた代金九〇、〇〇〇円をこえるものを武藤に支払つたわけでもないから、被告が靖から同人所有の右農地三筆を買い受け、武藤から同人所有の冒頭に述べた農地を取得するため結局金一八〇、〇〇〇円を費したことを前提とする原告の主張はその理由がない。

(三)について。まず、木幡村昭和二七会計年度歳出予算において村立中学校の校庭拡張のため要する経費のうち離作補償金を支弁するため定められた金額について考えるに、甲第一号証中、木幡村昭和二七会計年度歳出予算の記載のうち中学校の新営改築に要する補償金及び補てん金の項の附記欄には「離作料、一一、八〇〇円」との記載があり、他方いわゆる節欄には「補償金、一一八、〇〇〇円」の記載があるが、右附記欄の記載は右補償金算定の基礎としてその明細が記載されたものであることは右予算書の記載全般を通じて明らかであつて、これ等の事実に依れば「離作料一一、八〇〇円」の記載は「雑作料一一八、〇〇〇円」の誤記と認めるのが相当である。従つて、右予算において離作補償のため支出しうるものとして定められた金額は金一一八、〇〇〇円と認める。

ところで、菅野靖所有の字下小寺山八四番、八五番、八七番所在の田三筆は村が買い受けたものでなく、村は武藤登が靖から同農地を買い受けるについてその仲介をしたに過ぎないのであるが、武藤登は、その所有の字田中一三番所在田一反歩を村に売却する代償として右三筆の農地の取得を求めたのであり、これを武藤に耕作させるためには、その小作人である菅野伊宗治を離作させる必要があつたので、離作料四〇、〇〇〇円を支出したことは前述のとおりであるから、右金員は武藤から右農地を買い受けるに要する経費というべきであつて、もともと前述の予算中、村立中学校の校庭拡張のために要する土地購入費に含めて計上されうるものである。従つて被告が右金四〇、〇〇〇円を離作補償のために支出しても、右支出を違法のものということはできないのであつて、この点に関する原告の主張もまた理由がない。

(四)について。地方住民が地方自治法第二四三条の二の規定に基き、当該普通地方公共団体の長若しくはその職員につき財産の違法な使用があることを理由として裁判上その違法行為の制限若しくは禁止を求めうるのは右長若しくは職員が当該地方団体所有の財産を違法に使用した場合に限られるわけであつて、違法使用の対象となつた財産が当該地方団体所有のものでない場合までも右訴が許されるものでない。ところで、本件議決の対象という字田中一四番所在田一反歩が村有財産であるかどうかの点について原告は何等主張も立証もしないのであり、むしろ甲第一号証中議案第一七号第一八号の各記載によれば右一四番所在田は村所有のものでないことが認められるのであるから、仮に原告主張のように村議会が違法に同農地をかい廃する旨を議決したものとしても原告は前示規定に基き右議決の執行禁止を求める訴を提起することは許されないのである。また、同条第四項の規定により裁判所が判決しうるのは、当該普通地方公共団体の長若しくはその他の職員に対し違法若しくは権限をこえる行為の制限、禁止を命じ、それを取り消し若しくは無効を確認しまたはかような行為により被つた地方団体の損害の補てんを命ずることに限定されるのであつて、広く積極的な作為を命ずる給付の判決をなしえないものといわなければならないから、原告の被告が字田中一三番所在田をかい廃するに必要な手続をとることを命ずる旨を求める訴(かような訴が一定したものとして許されるかどうかの点はさておく)もまた許されないところである。従つて、原告は地方住民としての資格で地方自治法第二四三条の二の規定に基き右のような裁判請求権を有しないものというべきである。

以上説明のとおり、本件訴のうち、被告に対し木幡村議会が昭和二七年三月二八日木幡村大字内木幡字田中一四番田一反歩についてした農地かい廃の議決の執行禁止、同所一三番田三反二畝二〇歩のうち一反歩をかい廃するに必要な措置を命ずる旨を求める部分は裁判請求権がないから却下すべきものとし、原告その余の請求はすべてその理由がないから棄却すべきものとし、訴訟費用の負担につき民訴法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 斎藤規矩三 間中彦次 裁判官西川正世は転任したので署名押印することができない。裁判官 斎藤規矩三)

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